和田遼香さん
SAWAMURA 新卒入社2年目 和田さん

・地域:大阪府→滋賀県
・前歴:大学
・現職:ブランド推進室

滋賀県高島市という、なかなか知っている人を探す方が難しそうな自然豊かな地方タウンで、学生から注目を集める企業がある。SAWAMURAは、この3年で社員数が60人から120人へ倍増。新卒社員がほとんどで、さらにその半分は滋賀県を越えて大阪や京都といったエリア外からの応募という。
「きっかけを創造する」をミッションに掲げる同社のどのような部分が、移住というハードルも越えて学生に「働きたい」と思われているのだろうか。新卒入社2年目の和田さんへそのきっかけを聞くと、むしろそれも魅力になっているようだ。

地方移住×建設業のシナジー
地方創生の一つの成功例となるか?

滋賀県高島市。この市の名前を聞いて、何かイメージが浮かぶ人は珍しいんじゃないかと思う。
京都から1時間ほど北東へ行ったところにある、琵琶湖の北西に位置する歴史ある地域。安曇川と石田川の流れる琵琶湖に隣接した平地エリアが、京都のベッドタウンとしてのどかな町並みを形成している。
人口およそ5万人。対して面積は約700㎢ととにかく広い。東京都の3分の1くらいの広さがあるが、多くのエリアに森林が広がっていて、自然豊かな景観を作っている。

しかしそれらを情報として聞いても「ふーん」という感じで、特に足を運びたいとか、住みたいとならないのが正直なところ。
ほとんどの人にとっては気に留めることのない「特徴のない地方の町」の一つだろう。
そんなこの町に、学生からいま熱い視線を集める企業がある。
株式会社澤村(SAWAMURA) だ。

SAWAMURA社屋

「きっかけを創造する」を企業理念に掲げ、建設事業から 注文住宅・リフォーム・オフィスや工場の建設まで手掛ける総合建設業である同社は 、地域密着を軸に事業を展開しながら、ここ3年で社員数が倍増している。
これは驚くべきことで、「建設業×地方企業」という学生にとってはダブルでマイナスの肩書を背負っているからだ。新卒社員が採用できるだけでも驚きなのに、高島市のある滋賀県内のみならず京都や大阪、兵庫の京阪神エリアからも募集に応募があるという。

「高島市移住計画」を発案

そんな同社が今回打ち出したのが「高島市移住計画」だ。
今後、高島市への移住を推進することを目的に、大阪や京都など、入社と同時に移住してきた同社の社員たちが高島市で働き、暮らす「生の声」を発信していく計画だという。
この取り組み、同社を含む建設業がやることに意義があり、ビジネス的なシナジーもある。

なぜ今までなかったのか。

おそらく理由は、圧倒的なモデルケース不足。

それを考えると、どうしても昨今の「地方創生ブーム」の問題点のようなところが思い当たる。地方移住と言っても、誰もが浮世離れした暮らしがしたいわけじゃない。メディアに映る地方移住はリアリティがない……とここで気が付くのは、地方で暮らしたい「普通の人」にとって、当たり前に足りていないものがあったこと。若者に共感され、働きたいと思える将来性のある企業の存在だ。

「地方プロデュース業」としての期待

建設業に限らず、地方で働く若者がその地域と企業のことを発信することは、地方創生の解決策としてたくさんの可能性を秘めていると思う。この取り組みが同社と高島市にどんな効果を生んでいくか、今後の展開が非常に気になるところだ。
この「高島市移住計画」のように、確かに同社の取り組みはかなり面白い。同社を通じて高島市を見ると、「印象のない田舎町」に多くのチャンスがあるように思える。

まず分かりやすいところだと「きっかけ創造大学」。著名なIT企業である面白法人カヤックやセレクトショップのBEAMSなどから講師を迎え、ワークショップなどを行うもの。この取り組みは社内向けのモノではなく、「学生と高島をプロデュースする」と銘打って、高島市の住民や各地の学生が参加できる。

社内向けには、入社後も常に成長できるよう整備された「SAWAMURA共育カレッジ」がある。施工管理業務のマニュアルが個人でばらばらだったことをきっかけに、業務全般で標準化を進めてきた結果だ。
建設業界は業務の標準化(+IT化)が遅れていると言われる。同社では現在進行形の部分もありつつも、社会人としての一般教養から専門的なスキルまで学びの場が充実しているそうだ。

まず前提として、SAWAMURAという会社はだれもが知る会社では決してないが、70周年を迎える地方の伝統企業である。そこで培われてきた安定感を土台としながら、未来へのビジョンを持った若者たちが入ってくる体制になったことで、「面白いことができる」「可能性のある会社で働いている」という期待と希望にあふれているのを感じられた。

同社が打ち出した「高島市移住計画」もそうだが、建設会社が母体となってやるとシナジーがあることが多い。業界全体を見れば建設業は下火と言われるが「地方プロデュース業」に変化することで可能性はいかようにも広がるのではないか。「地方創生」の答えの一つを見つけた気がした。

若者は地方企業であるSAWAMURAのどの部分にひかれて入社を決めたのだろうか?
新卒入社2年目の同社ブランド推進室の和田さんへのインタビューを行った。

若手がブランドを作っていく会社

————— どうして入社を決めたのですか?

正直なことを話せば、最初のきっかけは就職情報サイトのスカウトメールです(笑)。人生で初めて 「SAWAMURA」 の名前を知ったのは、そのメールを開いた瞬間ですね。

もしかすると、建設業について考えたのもその瞬間が初めてかも……

私自身は大学でずっと教育について勉強をしてきました。なので、建築のことについては全然なんです。

でも、すごく素敵な会社だなと思いました。建設業の枠にとらわれず、高島市という地域そのものを盛り上げる取り組みをたくさんしているところとか。

地域のことを本当に思っている会社だからこそできるんだなと。そこに共感しました。

高島市はとても自然豊かな場所なんですよ。とにかく環境がいいです。都会だけじゃなくて、そういう地域にいい企業を作るっていうのが弊社のビジョンのひとつでもあります。

これって高島市も含めて、誇れるブランドにしていくってことだと思います。「それをいっしょにつくっていくポジションに」という話をされて、入社を決めました。

和田遼香さん
ブランド推進室の和田です。新卒で入社して2年目になります。大学卒業まで暮らしていた地元大阪の地を離れ、滋賀県へと移住してきました。

————— 約60名の社員数だった3年前に対し、現在は120名近く在籍しているんですね。なぜ社員が倍増していると思いますか?

私の入社前の話になってしまうのですが、ちょうど3年前くらいからスタートしたリブランディングの取り組みがきっかけだと思います。

リブランディングの中で一番大きな転換点を挙げるとすると、会社のミッションが大きく変わったことでしょうか。

現在の弊社のミッションは「きっかけを創造する」。それ以前は、「 地図にない街をつくる 」というものでした。 私たちの ”建築をきっかけにして、お客様や地域の方の暮らしや営み=ミライが良い方向へ変わってほしい” という想いが込められていました。

もちろん建設業は地域の課題解決に貢献します。ミッションが変わったというより「打ち出し方を変えた」といった方が正しいかもしれません。

考えや想いは変わってないんですけど、「表現方法を令和の形に変化させた」という感じでしょうか。

ですがこの変化が弊社が変わるきっかけになったのだと思います。このミッションの変化は建前ではなくて、弊社では建設業の垣根を超えた取り組みであっても、若手であっても、自由に発信ができ、チャレンジさせてもらえます。その環境が整備されています。 そうした期待感が社内に満ちているので、優秀な人が集まってきているのかなと思いますね。

————— どんなところが魅力的?

いま弊社では、若手がブランドをつくっていく立場なんです。

自分たちが考えている想いをどうやって発信するのか、どこに発信するのかが大切になるので、ブランド推進室としては、その道筋を整えていく仕事をしていると思っています。

例えば、社内報で部署ごとに取り組んでいることを毎月発信することや、社内のコミュニケーションを活性化させるイベントの企画運営などのインナーブランディングにあたる取り組みがその例です。また、「経営方針発表会」や「表彰イベント」など、それらをプロデュースする仕事に関われるのも、とてもやりがいがあります。

ほかの事業を見れば、昨年グリーン事業がスタートしたのですが、きっかけとして住宅事業があって。「住んでいて心地いいってどういう状態だろう?」っていう本質を追求したら、そういう答えになったそうです。あまり見ないようなユニークな観葉植物を中心にセレクトしています。 「きっかけを創造する」弊社のミッションですが、普通ミッションって何かを達成するものじゃないですか。弊社の場合そうではありません。だから、こういう答えが出てくるのかなと。

2020年10月にオープンしたSAWAMURA運営のグリーン雑貨店「HARU Green Planning」

————— ユニークな取り組みを教えてください。

「きっかけ創造大学」は、著名な方に講師をお願いして、SAWAMURAの社員だけでなく、高島の人たちや学生さんと一緒に学ぼうという取り組みです。定期的に開催していて、これまでにIT企業のカヤックさんやBEAMSさんなどをお呼びして、お話を聞かせて頂きました。

社内だけでなく社外にも開かれているのが弊社らしいところです。

「委員会制度」も面白いですよ。

それこそ新卒採用も、各部署から集まった採用委員会が、その年の採用イベントを自分たちで運営し、学生に向けた当社の魅力発信も行っています。  年間の採用スケジュールや発信方法等の広報・施策の企画はブランド推進室が行い、運営舞台として学生にどうアプローチするか考えるのが採用委員の役割です。 私も今年そのメンバーですから、入社年数とかは全然関係ないです。むしろ6人中4人が私のような若手ですね。定期的にミーティングを行っていますが、みんな前のめりで議論をしています!

新卒採用委員として若手も活躍する

————— 社員教育について教えてください。

「SAWAMURA共育カレッジ」という社員教育プログラムをつくっています。これからキャリアを築いていく学生から見ても魅力だと思います。これでまずは全体を見て、スキルをどういう風に役立てられるかというキャリアパスが描けるんじゃないでしょうか。

誰でもベーシックなスキルを身に着けないといけないという考えがあるので、社会人としての一般教養から、各部署に配属された人たちが専門的なスキルを身に着けるためのものまで、多岐に及んでいます

このプログラムは、現場監督の業務が教える人によって異なっていたことをきっかけに、業務全般で標準化を進めてきた結果だそうです。

現在進行形で標準化を進めているので、どんどんブラッシュアップされていくと思います。仕事を「背中で覚えろ」ではなく、社員教育プログラムとして組み込まれています。それに新卒の社員にはそれぞれ教育係じゃないですけど、一定期間はメンターの先輩が付いてくれるので、安心できますね。

————— 高島市に来てみて、どうでしたか?

高島って、結構田舎なんですよ(笑)。

ちょうどいい田舎だけど、ただの田舎じゃなくて、ものすごく牧歌的なんです。自然がたくさんあって、琵琶湖があって、魅力的です。

私自身大学の時教育を勉強する中で、小さい子どもたちと一緒にする課外活動を4年間、そういった自然豊かな場所でやっていたので、抵抗が少なかったのかもしれません。

でも高島にはその分可能性があると思います。建物を通して高島や地域の豊かさを創造していきたいというのが弊社のビジョンです。私もそう思います。 ちなみに私の同期や先輩にも多くの移住組がいますが、年齢の近い先輩が物件選びから親身にアドバイスしていただいたので不安はなかったです。

————— 「高島移住計画」について教えてください。

 高島で暮らす魅力を弊社が発信していく企画で、“住むところ”と“仕事”それに“暮らし方”の3つを提案できたらいいなと考えています。

いま、地方で暮らしたいひとってすごく多いと思うんです。環境だけでなく、地域に貢献できるって感覚があってやりがいもあります。

でもその中には、地方じゃ働く場所が限られていて、能力を発揮する場もないって、諦めてしまっている方がいるんじゃないでしょうか。

さらに付け加えれば、どこに暮らすか、お子さんがどの学校に通うか、悩みがありますよね。弊社のような「暮らしのプロ」の会社だからこそできることだって気が付いたんです。

ちょっと弊社の自慢っぽくなりますが、「本物があるから」実現できた取り組みだなと。私も大阪からこちらに来ましたし、ほかにもたくさんの社員が移住してきています。

モデルケースがたくさんあるので、それを発信することでSAWAMURAのことだけでなく、高島市の魅力を多くの人に知ってほしいですね。 実際、この数年で社員が倍になるくらい増えていますし、これってほんとの地域貢献だなとひそかに思っています(笑)

————— 今後どんなことをしたいですか?

そうですね、具体的にあれがしたい、これがしたいっていうことはまだ考え中ですが……。

SAWAMURAって良い会社だよ、高島市ってこういう魅力があるよって心から伝えられることで、大きな何かが変わるんじゃないか。そんな期待感があります。

変わるってすごく大変なことだと思います。でも、それができるんじゃないかってわくわくしています。