SAWAMURA 2019年入社 和田山さん

・地域:京都府→滋賀県
・前職:広告制作会社の広告プロデューサー
・現職:総合建設会社のブランド&マーケティングマネージャー

今回お話を伺ったのは、京都で広告物の制作会社に勤めていた和田山さん。
2年前に滋賀県の高島市にある総合建設会社・株式会社澤村(SAWAMURA)に転職した、
地方転職成功者のひとりである。
大都市の広告業界で働き、全国やグローバル規模の大手クライアントを相手に活躍していた和田山さんは、なぜ地方で働くことを選んだのだろうか。
今の仕事にやりがいはあるのか?これからのキャリアをどう考えているのか? UターンやIターンに伴う地方への転職を考えているハイクラス人材が持つ疑問にお答えいただいた。


前職は広告プロデューサー。
全国規模のクライアントを抱えていた

————— まずは、転職前にどんな会社にいらっしゃったのか教えてください。

前職は、京都の広告制作会社にいました。デザイナーをはじめとした制作スタッフを社内に抱えて広告物の制作をおこなう会社です。
制作会社は一般的に代理店を通したお仕事をすることが多いのですが、私がいた会社はちょっと特殊な会社。ほぼすべての仕事が直接やりとりをさせていただく一次受けでした。
全国、あるいはグローバルな大手メーカーなどをクライアントに抱えながら、新規顧客も獲得しつつ、広告物を制作していました。

————— 大手クライアントを相手に、多くのスキルが必要とされそうな会社ですね。

そうですね。カタログ、撮影、ウェブ、映像などをすべておこなえる体制が整っており、ワンストップでメディアミックスプロモーション可能なところが会社の売りでした。
たとえば、クライアントの新しい商品が出る時には、撮影のディレクションから、カタログへの流し込み、コピーライティング、ウェブページ作成、そこに置く動画などを一括で作っていましたね。

————— 和田山さんは、そこでどんなお仕事をされていたのでしょうか?

私はそこで、営業企画として働いていました。いわゆる広告プロデューサーです。
新規で上場企業に突っ込んでいき、既存の会社から切り替えてもらってコンサルをおこない、場合によってはアートディレクションまでを担当。どの情報をどこにどのように配置するかのワイヤーフレームと呼ばれる情報設計や、画コンテを描くこともありましたね。広告業ですので、もちろんマーケティングも。
大学卒業後一番最初にお世話になった会社だったので、約9年間キャリアを積ませていただきました。

より深く、濃度の高い仕事を求めて。
考えてもいなかった“地方”の建設会社に転職

————— 京都の広告制作会社で活躍されたのち、地方に転職されたんですね。現在働いていらっしゃる会社は、どんな企業なのでしょうか?

SAWAMURAは、滋賀県高島市にある総合建設会社です。琵琶湖の近くに本社を構えています。東京都の三分の一の広さにたった5万人で住んでいる小さな街で、川が流れ、田畑があり、裏山を背景に小さな駅のある、ほっとする景色のある場所。城下町として栄えた歴史ある街で、会社から徒歩圏内に天守跡を見ることもできます。
そんな場所でSAWAMURAは70年もの間建設業に携わってきた会社で、現在は公的な建設物、土木事業、地元企業のオフィスや工場、そして店舗や一般住宅までを手掛けています。

オフィスの一角にはオシャレなカフェコーナー。働きやすい環境が整っている。

————— 現在のお仕事内容をお聞かせください。

ブランド推進室の統括代理をしています。各部署の今期の方向性や、SAWAMURAのブランド向上のためのベストな方法を導き出す部署でして、2年前に出来たばかりの部署です。
ですから、常に新しいことをどんどんやっていく挑戦的な仕事をさせていただいています。
ブランド推進室は、「会社のミッションを実現するために何をしていくか」を考えながら動く、広報、営業企画、経営企画、新規事業開発を兼ねたようなところ。そこでプレイヤーとして働きながら、マネジメントをしています。

————— なぜ地方へ転職を考えたのでしょうか?

地方への転職は、実はまったく考えていなかったんです。 結果として31歳で転職したのですが、前職では平均以上のお給料をいただいていましたし、特筆すべき不満もなかった。
でも「ここでの自分の役割は、ある程度果たせたのではないか」「もっと自分の枠を広げ、踏み込んだ仕事をしたい」という思いが出てきていました。前職の制作会社という立場での関わりでは、クライアントに踏み込める限度がやはりあったんですね。
ですから、実際に生活者を相手にしている会社で、自分がつくったものが生活者に手に渡り、伝わり、会社の役に立つ。それを実感し、責任を持ちたいと思ったんです。

————— つまり、キャリアップを考えた上での、地方への転職だったんですね。

はい、その通りです。地方であるというのは結果として転職した魅力のひとつであり、現在の私のキャリアのアドバンテージになっていると思います。
でも、「地方だから」転職した訳ではなく、「ここでやりたい仕事ができると思ったから」地方に来たという方が正しいかもしれません。

魅力的な経営者に巡り合うチャンスは
地方にこそある

————— 「転職先でなら自分のしたい仕事ができると思った」とお話いただきましたが、そう思われた理由は何だったのでしょうか?

転職先を探す中でたまたまSAWAMURAの社長とお会いし、これからブランディングに取り組みたいという熱い想いを聞かせていただきました。
先ほどもお話したようにそれまでは地方で働くというビジョンはなかったのですが、このときに他の会社とは違うという印象をSAWAMURAに感じたんです。
もちろん都会では、ブランディングに力を入れる企業は珍しくありません。でもこの挑戦を地方でおこなうとき、私にできることがたくさんあるのではないかと思いました。大きなことをやりたいんだという社長の想いを共有できた瞬間でした。

————— いい経営者は都市の大小と関係なく存在すると、身を持って体験されたんですね。

はい。私は今の社長に出会うまで、経営者という職業を本質的には知らなかったのだと思います。
まわりをしっかりと見て、社員とその家族に責任を持ち、利益やお金のその先にある会社の存在意義を追及している。現社長は3代目なのですが、会社の現状維持でなく、さらに地域、社会までをよりよくしたいという夢を持ち、現実的に動かしています。
「ああ、こういう人を経営者というのだな」と感じました。
自分が働く会社の社長を公の場で褒めるのはちょっと変かもしれないのですが、社長を見ていると、“英雄”という言葉を思い出すのです。
自社を成長させるだけでなく、それをまわりに広げていく。「そうした方が仕事がおもしろい」という姿勢には、純粋に感動することも。もちろん利益は増やさなければいけないけれど、それはなぜかというと「より創造性のある仕事をしたいから」ということがきちんと伝わってくるんです。
私はSAWAMURAに転職しましたが、地方にも魅力的な経営者はいっぱいいると思いますよ。出会えてよかったと思う人に巡り合うチャンスは、むしろ地方にこそあるのではないでしょうか。

地方ならではのおもしろさを実感。
今後も自分の力を燃やしていきたい

————— 和田山さんの今までのキャリアは、転職先ではどのように活かせていますか?

前職ではプロデューサーをしていたので、現在のマネージャーという仕事、つまり部署を全体統括をするという役割に、キャリアを活かせていると思います。
加えて私は「マーケティング」や「人にどう見せるか、伝えるか」ということに特に専門性を持っているので、各部署の集客方法などをプレイヤーとしても常に情報収集し、アップデートを図りながら社内に還元しています。
自宅のある京都から職場である滋賀への通勤時間に電車内で勉強ができるのも、今思うと効率的。AirPodsは通勤に革命を起こしましたよね。耳からいろんな情報を入れることができるので、勉強になっています。

————— 現在のフィールドである建設・住宅業界ならではのチャンスは、どんなところにあるでしょうか?

ゼネコン・住宅会社は商品の単価が高いので、商品がひとつ売れれば、さまざまなことに挑戦できる規模のお金を生むことができます。それはこの業界の大きなメリットです。
それこそ数億円規模の案件は、そこで得た利益をしっかりと地元に還元できる。並行して雇用を増やしていくことができれば、地元企業としての責任がひとつ果たせるのではないでしょうか。こうして大きなお金を動かすチャンスのあるところが、建設・住宅業界ならではの特徴だと思います。
実際SAWAMURAはリブランディングしてから3年で40人社員が増えました。5万人の街で40人働く人が増えたというのは、大きいですよね。人の流れができたことで駅前のお店の様子も変化したはずですし、自治体への大きな貢献ができていると自負しています。

リブランディングにより「きっかけを創造する」をブランドミッションに掲げ、関わる全ての人々が前に進める・笑顔になれるきっかけをつくる企業体を目指している。

————— 地方だからこそのおもしろさと言えそうですね。「地方でこそできること」をテーマにすると、他にはどんなことが上げられるでしょうか?

まずは単純に、地方の方が「やってないこと/これからできること」が多いですよね。ブランディングや採用マーケティングもそうです。できないというより、やっていないことが多い。お金をかけて他の会社にお願いするのではなく、それこそ、地方企業はこれからどんどん自分たちで広報活動をしていくべきですし、そこには大きなチャンスがあると思っています。
一流の魅力と実力を持っているからこそ、それをうまく伝えていくだけでどんどんおもしろくなり、より成長していくことができる企業はたくさんあるはずです。
今回ハイクラスの地方への転職事例というテーマで私を選んでいただきましたが、自分はまだまだだと承知しつつも、大都市で働いた経験のある私たちだからこそワクワクする仕事をつくっていけることを日々実感しています。

————— 最後に、今後のキャリアプランを教えてください。

大きく言えば、地方ならではの問題を会社を通して解決していくことを考えています。
今のところ、SAWAMURAのブランディングは成功しています。これにより、ブランドの力でこれだけ街が変わるということがわかった。
なぜ地方に若者がいなくなるかというのはつまり、働く場所がないからです。ですから自分たちと関わってくださる会社に私たちの知るノウハウを広め、滋賀県全体で人材が活躍できる会社を増やしていきたい。
このフィロソフィーを横につなげ、地域に貢献していくのが今の私のキャリアプランです。
頑張っている会社、成長しようとしている会社と一緒に仕事ができる今の私の立場に、大きな魅力を感じています。
仲間意識をもって集まり、人が増え、経済がまわっていく。 そういう地方での「仕事のカタチ」が全国でたくさん興る未来になったら、とてもおもしろいですよね。